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   Q 乳がん検診の動向及び足立区乳がん検診の現状
 
 
   

 
 
大塚ブレストケアクリニック/足立区乳がん検診運営委員会 委員長
大塚 恒博
 
足立区の乳がん検診も平成15年(2回実施)からマンモグラフィ併用検診に切り替わり、さらに平成18年度からは通年性に変更、現在に至ります。
平成19年4月で通年性に変更して1年が経過しますが、受診率の向上につながってきていますが、様々な問題も生じています。ここで、日本の乳がん検診の今までの流れと今後の動向、ならびに足立区乳がん検診の現状及び問題点を検証してみたいと思います。
 

 
日本の乳がん検診が国家レベルとなったのは、1987年からです。厚生省は老人保健法に基づく保健事業に乳がん検診を導入し、視触診法を標準方式とする乳 がん検診が全国レベルで開始されました。これにより乳がん罹患数は増加しました。しかし、欧米諸国の死亡率が減少しているのに、日本の死亡率はむしろ増加 傾向にあります。現時点でもその傾向があり、毎年乳がんの死亡数は毎年4%増加し、2004年には10609人と1万人を超えてしまいました。
欧米諸国はその頃乳がん検診にマンモグラフィを取り入れている国が多く、これが死亡率を減少させる1要素となっている可能性が示唆されます。視触診を行っている国も多数ありますが、必ずマンモグラフィを併用しています。
そこでわが国も2000年3月に50歳以上の女性には視触診法とマンモグラフィ併用の隔年検診を厚生労働省通達(老健法第65条)として開始しました。し かしこれだけで死亡率は変わるでしょうか?この検診を受診する住民がいなければ、意味がありません。一般的に乳がん検診において救命効果が現れる受診率は 30%を超えてからと言われています。しかしわが国の現状は約12%と足元にも及ばないのが現状です。ちなみに米国の受診率は毎年マンモグラフィを撮影 し、約70%であり、明らかな差があります。これは精度の問題と、国民の関心の差があるからでしょうか?
 

 
国民に関心を持ってもらうには、啓発活動を行うことだと思います。それには乳がん検診の必要性をアピールすることと、自己検診を普及させることです。
毎年10月はピンクリボン月間として、全世界で様々なイベントが行なわれています。ピンクリボンは1991年アメリカの乳がん研究財団創設者のイヴリン・ H・ローダー女史と、セルフマガジン編集長のアレグザンドラ・ペニー女史が考案したものです。当時のアメリカは乳がんの罹患率も死亡率も高かったので、女 性が乳がんを日々意識することの象徴となるようにという願いがこめられて、ピンクリボンが出来ました。そして乳がんの早期発見、早期診断、早期治療の重要 性を訴えるために、全世界共通で使用されるシンボルマークとなりました。東京でも毎年10月に東京タワーがピンクに染まり、あちらこちらでウォーキング大 会が行われ、無料のマンモグラフィ検診も受ける事が出来ます。足立区でも足立区乳がん患者会(たんぽぽの会)が中心となり、行政の協力の元、毎年ウォーキ ング大会を開催しています。今年も第4回大会を10月11日(木)に予定しています。
 

 
次に精度の問題があります。マンモグラフィ検診精度を上げるには、[1] 同じ条件で撮影できる装置の確保。[2] より良い条件で撮影できる放射線技師の確保。[3] フィルムを確実に読影できる医師の確保。[4] 全国統一の診断基準の作成が必要です。マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)というものがあり、試験を受け、合格したもの(施設認定マンモグラ フィ装置、読影認定医師、撮影認定技師)は精中委のホームページに掲載されていますし、統一された読影診断基準も作成されています。
 

 
しかし問題点もありました。それはマンモグラフィの所有台数と、撮影や読影する側に問題が出現しました。2000年以降マンモグラフィ検診は増加してきま したが、2002年度全国乳がん検診の現状という厚生労働省の報告を見ると、乳がん検診を実施している市町村は97.1%に達しているのに対し、マンモグ ラフィ検診を実施している市町村はわずか48%でした。これは導入後3年を経過した時点でも、決して普及していないということになります。マンモグラフィ は高額なため、導入が進まないというのが大きな理由でした。しかし、視触診単独による乳がん発見率は0.11%であるのに対して、マンモグラフィ併用では 0.19%と明らかに高くなっているので、厚生労働省は、2005年度に国家事業として全国の都道府県に対して、78億円の予算で、500台のマンモグラ フィの緊急整備を図ることを決定しました。これで多くの市町村にマンモグラフィがいきわたる事になります。しかしマンモグラフィの数を増やしても、撮影技 師、読影医師も増やさなければなりません。当時多くの読影医は大学病院など大病院に勤務している事が多かったのが現状です。大病院は精密検査機関であり、 検診に携わっていない施設もあり、全体的に読影医不足となっていました。そのため、精中委は講習会の開催を増やし、読影医を増やしていきました。撮影を担 当する認定技師も同様です。現在全国に施設認定を取ったマンモグラフィは775台あり、読影認定医は約7000人、撮影認定技師は約6300人存在しま す。死亡率減少につながる受診率は30%ですので、そのマンモグラフィを読影するのに必要な読影医は約2000人必要ですので、現状では充分な乳がん検診 ができる体制は整ったと思います。
 

 
現時点では40歳から2年に1回のマンモグラフィ併用検診が老健法第65条で制定されています。
足立区でもこれに準じて平成15年度からマンモグラフィ併用検診を開始しました。撮影は区内10施設、判定22施設、区外は癌研、東京都予防医学協会で、同じ制度で平成15年度(2回)、16年度(5回)、17年度(5回)施行しました。

この間の要精検率(がん検診受診者のうち、精密検査を必要とされた者の割合:全国平均8.9%)は15年度:10.3%、16年度:9.6%、17年度:10.0%とそこそこのデータでした。

がん発見率(がん検診受診者のうち、がんが発見されたされた者の割合:全国平均0.24%)は15年度:0.206%、16年度:0.355%、17年度:0.322%、
陽性反応適中率(検診結果が「要精検」の者のうち、がんが発見された者の割合:全国平均2.7%)は15年度:2.0%、16年度:3.7%、17年度:3.2%と全国平均を上回っています。

しかし、乳がん発見数が22例に対して早期乳がんが4例と少ないこと、精検受診率(要精検者のうち、精密検査を受けた者の割合:全国平均81%)は72% と低いこと、平成15年度はマスコミの力もあり、2回で1939人受診したのに対して、16年度は5回で3097人、17年度は5回で2177人と受診率 は低く、受診率(全国平均12.9%)は15年度:1.1%、16年度:2.3%、17年度:3.7%と低いことが問題になります。受診率の減少を分析す ると受診者の意識の問題と共に検診制度の問題もあるということが判明しました。
すなわち、申し込みから判定まで約2ヶ月かかる。撮影施設と判定施設が決められてしまっている。お知らせがないので次回の検診を忘れてしまう。などの問題 があがり、この件に関して検討を重ね、平成18年度から通年性に変更しました。通年性に変更すると共に精度の向上にも努めるようにしました。

改善点は
★今までの2ヶ月に1回の集団読影会を廃止し、読影は認定を持っている10名の医師が交代で二人目読影を行い、読影は2週間に1回行なう。
★一人目読影は撮影施設で撮影時に行う。(撮影施設には必ず読影認定医が在籍)
★さらに指導的立場のアドバイザーが、不一致症例を検討し、さらに精度を高める。
★読影は2週間に1回行うので、住民には結果が早く還元できる
★住民には受診勧奨する。(対象者(前回受診者)に受診票を送付)。
としました。
短期間の内に完璧な読影結果を出し、それをもとにして、判定現場で視触診を行なう事により、視触診の精度も上がるようにしました。また、撮影各施設には勉 強熱心な優秀な診療放射線技師が在籍しており、足立区乳がん検診技師部会が設立、今回医師会でファントム等を購入し、定期的に精度管理を行い、どの施設で も基準に当てはまるマンモグラムを提供できるようになります。
 

 
このような努力で、通年性に代えてからの平成18年度の受診数は4月から12月まで既に2490名に達しました。更なる受診率の向上が期待されます。来年度の受診率は10%を目標にして、全国平均に少しでも近づけたいと考えています。
 

 
受診率の向上に伴い問題点もあります。その大きな問題の一つは読影医不足です。現在読影会で読影しているマンモグラフィ認定医は11名です。3グループに 分けて2週間に1回の読影会を実施しています。受診数の少ない場合は問題ないのですが、現在受診数は伸びてきており、1回の読影で250名を超えることも あります。また平成18年度から癌研が有明に移転し、遠方となったため区の検診施設からはずれ、4月からは東京都予防医学協会もはずれ、足立区内1本に絞 られます。現在の読影医では今後こなしきれなくなってくるでしょう。読影認定医も撮影認定技師も4月から更新性となるので、急激な人員確保は困難だと思わ れます。足立区医師会員の先生方の中で我々の仲間になって、一緒に読影していただける先生を募集します。ご希望の先生は、年2回行なわれている東京都主催 の講習会に参加して頂いたり、マンモグラフィ精度管理中央委員会ホームページからの講習申し込みが可能です。参加をお待ちしています。
 

 
次の問題点はマンモグラフィによる見落としの件です。2月5日の朝日新聞の1面に、40歳代のマンモグラムの感度は71%で3割は見落とされているという データが出ました。これは女性の乳房の解剖学的構造から生じるものです。女性は出産し、母乳を上げることにより、乳腺は脂肪に置き換わっていきます。若い 女性は、脂肪密度より乳腺密度が高いので、いわゆるdens breastとなり、乳腺内に病変が隠れてしまいます。これはいかに良いマンモグラムが撮影されても読影できません。現に足立区でもマンモグラフィが正常 で、触診で発見された乳がんが何件かありました。これはマンモグラフィ検診の限界と思われます。最近30代の乳がんも増加してきている事も含め、日本乳癌 検診学会では超音波検診の導入の方向へ動き始めました。今年から日本乳腺甲状腺超音波診断会議による乳房超音波診断ガイドラインの見直しが開始されてお り、今後行政でも超音波検診の導入の方向へ動き始めるでしょう。足立区乳がん検診でもこの問題に関して、前向きに対処していきたいと考えています。これら のことをクリアーして初めてわが国の乳がん検診もすばらしいものになってくるでしょう。そして乳がん死亡率も必ず減少して来ることと思います。

(平成19年2月)
 
 
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